それでも、やった
荷物整理をしていたら、随分前に夢中になったスモッキング刺繍の布が沢山出てきた。
やってみたい手芸のひとつだったのを、ようやく紹介していただいたスモッキングの先生、レッスンに三年ほど通った。
本当に可愛がっていただいて、しばらくレッスンをお休みしても、ニコニコ迎えてくださり、よくランチのお供もした。
色使いが絶妙で、目の利く方なら、私の師匠が藤田弥生先生だと、すぐにわかるだろう。
娘がちょうど小学生になったばかり。手提げや巾着、ワンピースにもスモッキングを入れた。
刺繍糸を眺めるだけで楽しかったし、とにかく、ほぼ毎日、針を持った。
思えば、経済的にも不安ばかりの頃。
習い事をしてる場合じゃないだろ!って時期。
でも、そんな私に、藤田先生は優しかった。「私が義母の介護をしていた時、決してつらかったわけじゃないの。でもね、夜、ちょっと刺繍するだけで心が落ち着いたのよ。そうしているうちに、教えるようになったのよ。」
ある作家が、スランプの時に、自宅から執筆用の部屋に向かう毎日、お弁当を作っていた、というドキュメントを、夜中に見た記憶がある。
それこそ、娘が寝て、私は針を持っていた夜。
作家が「今日も書けなかった。でも、それでも私はお弁当を作った。」というのが、胸に響いた。
娘が中学生で、成績が伸びないで、親子でモヤモヤしていた頃。
一問でもいいから、必ずやりなさい
何もしなかった日を作ってはいけない
と、娘に言った。
疲れていても、やりたくなくても、「それでも、私は、勉強した」と、思うことが、大切だと思っていたから。
テストの点が悪くても、「それでも、私はやった」のだから、まだ伸びるんだ、と思って進んで欲しかった。
やめてしまったり、諦めたら、オシマイなんだから。
娘は、素直にそれをやって、志望校に進み、今、高校二年生だ。
あんたは偉い!←親バカ
美しいスモッキング布を見て、反省。
それでも、私はやった、という生活、親のアタシが出来てない日々だな。
まずは、やりかけの刺繍を仕上げよう。