カプリンスキー氏
カプリンスキー氏 は、遠藤周作の短編である。
ちょうど、高校一年の娘の現代国語の教科書に出てくる。
中学の後半から徐々に、そして、いよいよ、深く読み込むことが要求される。
国語がキライとか、苦手とかいう生徒には、短編とはいえ(いや、短編だから?)、遠藤周作先生、なかなか手強い。
あらすじは、
私(遠藤)の旅行先のポーランドで案内をしてくれたのがカプリンスキー氏。微笑みに陰のある老紳士。街の素晴らしい場所を案内しようとするカプリンスキーに私が「アウシュビッツを見たい」と言う。カプリンスキーは、かつて家族とともにアウシュビッツの囚人だった過去がある。そして、私が案内されたアウシュビッツの中にある虐殺された人々の写真の中に、カプリンスキーの姉の顔がある。カプリンスキーの陰のある笑み。
アウシュビッツ、と言えば、我々カトリック信者はコルベ神父を思わずにいられない。
ある名も知らぬ父親が処刑されようとした時「わたしは家族がいないから」と身代わりになり、餓死させられたコルベ神父。
コルベ神父の亡くなられた場所を見ておかねばという「私」の思いは、静かな微笑のカプリンスキーへの言い訳のように書かれている。
しかし、平和に見えたカプリンスキーの微笑みの後ろに潜むのは、地獄のような過去だ。
囚人だったカプリンスキーに案内されたアウシュビッツ。
そして、最後に示されるカプリンスキーの姉の死への恐怖の写真。
地獄のような過去を抱えて、それでも人は生きていかねばならない。
それは、幸せなのだろうか。
誰かの為に、自分の命を捧げ、終わらせる人生。
それは、幸せなのだろうか。
人生は長く重い。
16歳の娘は、何を思っただろう。