通報
嬉しい入学式のあと、保護者の送り迎えも落ち着いて、学校に馴染んできた、、、ようなタイミングに、だいたい苦情の電話が入るらしい。
制服、制帽、制鞄だから、どこの小学生か、すぐにわかる。
駅でうるさい。鞄があたる。ふざけてる。走ってる。
毎年、春は苦情の時期。
さて、娘が小学校三年生の終業式の日だった。私は、役員をしていたので、校内で引き継ぎの準備を済ませ、帰りのバスで、娘の小学校の生徒達と乗り合わせた。
だいたいが、お友達同士、並んで座ってる。
うん、よしよし、、、。
いくつかの停留所を過ぎた時、ひとりの男の子があわてて立ち上がり、運転手に「降りたい。停めてください」と言った。
友達とふざけていて、いま出た停留所で降り損ねたのだ。
でも、バスは停留所以外で停まることは出来ない。
男児、泣く。
友達、しらんふりする。
回りの乗客、「次で降りなさいよ~」となぐさめる。
うー、仕方ない。私が、、、と思った瞬間だった。
(たぶん)5年生の男子が言った。
「泣くな。一緒に行ってやるから、泣かなくていい。」
今日は終業式だ。持ち帰りの荷物はあるし、お昼も食べてない。
そして、この経路のバスは20分に1本しかない。
一緒に降りて戻ったら、確実に、家に帰るのが遅くなる。
次の停留所
小さな後輩を連れて、先輩は降りていった。
かっこよかった。
私は、帰宅すると学校に電話した。
立派だったと、誉めてやりたい。
先生は「生徒の名前、わかりますか?」とおっしゃったが、さすがにそこまでわからない。でも、あの経路のバスを使う生徒は多いわけではない。
先生も「大丈夫です。すぐわかりますよ。必ず、生徒に伝えます。立派な態度だったと。いいお話をありがとうございました。きっと、生徒も、これから、益々頑張ってくれると思います。嬉しいお電話ありがとうございます!」と言ってくださった。
娘の小学校は、ひと学年80名。当時の副校長は、名物ともいえる先生。入学式の時点で、生徒の名前と顔が完璧に頭に入っており、どこの地域に住み、家族構成までほぼ把握しておられたと思う。
頑張った生徒は、すぐ特定されただろう。
通報の電話は、誉める時に、使いたいものだな、と、今も、あの光景を思い出す。