松方コレクション つづき
今回のコレクション展はは、睡蓮にはじまり、睡蓮に終わる。
しかも、出口近くに展示の睡蓮は、上半分を長く苦しい時間の中で喪失している。
松方氏が200億とも言われる資金で買い求めた数々の作品の中でも、睡蓮は、モネのアトリエにあった作品を直接モネから購入したという稀なケースでもある。
戦争は、いかなる理由があろうとも、時代に陰を落とす。
戦火から逃れる為に、額も外され、流転に流転を重ねるなか、傷つき、作品リストから漏れた睡蓮は、突然、カビだらけ埃だらけで、ルーブルから姿を現す。
松方家にようやく到着した睡蓮は、日本の高度な修復技術をもっても、ついに下半分の色彩を取り戻したに止まった。
松方家から西洋美術館に寄贈された睡蓮。
僅かな水面は、辿ってきた過酷で壮大な運命を、伝え続ける。