本の話
本、特に小説には、ストーリーや登場人物、歴史的背景、、、魅力の要素は沢山ある。
ズシンと音をたてて、胸に響く台詞や描写もある。
まずは、暗い話だけれど
松本清張の小説で、ある男の愛人が、全く関係のない男と心中を装って殺される話があった。愛人には老母に預けた娘がいて、いよいよ男と一緒になるから迎えに行くと喜んでいた矢先に殺されたのだった。
娘の死の知らせを受けた老母は娘について「良いことなど、なにひとつない人生であった」と言う。
田舎の暗い部屋に座った老母。なにも知らず母の帰りを夢みる幼子。
これを読んだ時、私は自分のことのように思えて涙がでた。
そして、この愛人だった女は、まだ私より幸せだ、と思って、また泣けた。
娘の不幸を知っている母がいるのが、羨ましかった。
私が苦しい何かを抱えているとき、私の親は助けてくれたり慰めてくれることはなかったから。
努力が足りない、運が悪い、頭が悪い、もっと頑張れ、と追い討ちをかけた。
そして「他人は簡単にかわいそうだって言うけど、親だからこそ厳しくしてるんだ」と
最近読んだ畠中恵の時代物小説
お気楽な跡取り息子が主人公。
ほやほやとして、ホントにお気楽な感じ(笑)
でも、恋女房をあっという間に亡くした心に傷もあるイケメン
ある日の昼下がり、母親から、お茶でも飲むかいと、お茶とお煎餅の載った盆を受け取り「ああ、こういう毎日っていいですねぇ」と言う。
すると、母親が
「おや、煎餅一枚で、満面の笑みだ。麻之助は幸せになるのが、上手いね」と。
幸せになるのが上手い
この台詞には参った。
何もよい思い出のない実家に帰らなくなってから、20年以上が過ぎた。
昨日より今日の方がよい。
そう思って生きてきた。
昨日を思うと、苦しくなるから。
ほんの少し、幸せになりたいだけなのに。
しかし、、、
幸せになるのが上手い
お煎餅一枚で幸せになる、これはいいな。
よいことがなくても、幸せになれる
そう思う